リスク・資金管理

複利と最大ドローダウンのトレードオフ|「複利は最強」の落とし穴

「複利は人類最大の発明」——投資の世界でよく引用される言葉です。自動売買でも、利益を再投資してロットを増やす複利運用は魅力的に見えます。しかし結論から言えば、複利は資産を増やす速度だけでなく、最大ドローダウンが膨らむ速度も同時に加速させます。この記事では、その見落とされがちなトレードオフを整理します。

複利の魅力:数字が加速する

複利運用とは、利益が出るたびにロットを増やしていく方法です。単純な例で見てみましょう。

  • 資金100万円でスタートし、月5%ずつ増えたとする
  • 単利(常に100万円分でトレード)なら、1年で資金は160万円ほど
  • 複利(増えた分も次のロットに反映)なら、同じ月5%でも1年で180万円近くまで増える

同じ「勝率・期待値」でも、複利にするだけで最終的な資産の伸びは大きく変わります。これが「複利は最強」と言われる理由です。

見落とされがちな裏側:ドローダウンも複利で拡大する

ここで見落とされがちなのが、複利は「増える方向」だけでなく「減る方向」にも同じ倍率で効くという事実です。

  • 資産が増えてロットが大きくなった状態で、連敗や急変が来るとどうなるか
  • 単利であれば、常に一定のロットなので下落幅も一定
  • 複利であれば、資産が膨らんだ後のロットは大きいため、そこからの下落(%表示のドローダウン)は同じでも、金額としての下落幅は膨らんだ状態のままになる

つまり、資産曲線が伸びれば伸びるほど、次の急変・連敗が来た時に「積み上げた利益」がまとめて削られるリスクも大きくなっているのです。

資産曲線が伸びるほど、1回の急変が重くなる

具体的にイメージしてみます。

  1. 資金100万円でスタートし、複利運用で順調に増え、資産が300万円になった
  2. その時点でのロットは、資金100万円の頃の約3倍に膨らんでいる
  3. ここで最大ドローダウン20%に相当する急変が来ると、失う金額は「300万円の20%=60万円」
  4. 資金100万円だった頃の同じ20%は「20万円」

同じ「%」のドローダウンでも、複利で膨らんだ後の下落は、金額として重くなります。複利と最大ドローダウンのシミュレーション を怠ると、「増えている時は気づかず、急変で一気に食われる」という展開になりがちです。

「攻めと守り」の綱引き

複利をどう扱うかは、結局のところ攻め(増やす速さ)と守り(耐えられる下落幅)の綱引きです。

  • 完全な複利(利益をフルに反映)→ 増える速度は最大だが、ドローダウン が来た時の金額的な打撃も最大
  • 完全な単利(常に一定ロット)→ 増える速度は緩やかだが、下落時の打撃も一定に抑えられる
  • 現実的には、この中間で「増えた分の一部だけロットに反映する」といった抑えた複利が使われることが多い

どちらが正しいというものではなく、自分がどれだけの下落金額に耐えられるかによって選ぶべき比率が変わります。

抑えた複利という選択

実務的な落としどころとして考えられるのは、複利の反映度合いを緩めることです。

  • 利益の一部(例:半分)だけをロット増加に反映する
  • 一定の資金水準に達するまでは複利、それ以降は単利に切り替える
  • 最大ドローダウンの想定金額が、常に「受け入れられる範囲」に収まるよう定期的に見直す

大切なのは、「複利にするかどうか」を感覚で決めず、膨らんだ後のドローダウン金額を具体的に計算してから決めることです。適切なロットサイズの決め方 の考え方をベースに、資産が増えた時点でも同じ計算をやり直す習慣が有効です。

よくある誤解

Q. 複利にすれば絶対に有利? A. 増える速度は上がりますが、下落時の金額的な打撃も同時に大きくなります。「有利/不利」は単純ではなく、耐えられる下落幅とのバランスで決まります。

Q. 単利のほうが安全だから常に単利が正解? A. 単利は下落幅を抑えられますが、資産の伸びは緩やかになります。安全を取るか、伸びを取るかはトレードオフであり、一律の正解はありません。

Q. バックテストの複利成績をそのまま信じていい? A. 過去の一本道の値動きに対する複利成績であり、実際にその通りの順番で利益が積み上がる保証はありません。順番が変われば、同じ手法でも最大ドローダウンの金額は変わります。

まとめ

この記事の要点です。

  • 複利は資産の伸びを加速させるが、ドローダウンの金額的な打撃も同時に加速させる
  • 資産が膨らんだ状態での急変は、初期の頃より重い金額的ダメージになる。
  • 完全な複利と完全な単利の間で、耐えられる下落幅に応じたバランスを選ぶ。
  • 資産が増えるたびに、ドローダウン金額の想定を計算し直す習慣が有効。

「複利は最強」という言葉だけを鵜呑みにせず、その裏にあるトレードオフを理解した上で、自分に合った比率を選んでください。


※ FXおよび自動売買には損失が生じる可能性があります。本記事は一般的な解説であり、特定の投資判断を助言するものではありません。記事中の数値は説明のための仮の例であり、将来の運用成績を保証するものではありません。

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